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題名の non troppo は、「過度にならないように」という意味です。
それでは、お楽しみ頂ければ幸いです。
アクアがこの学校に転校してきてから、一週間がたとうとしていた。
教室では、いつものように4人が話している。
…ふと、架絽が話題を変えた。
「そういえば…桃香、最近大丈夫?」
「え…なに?突然」
3人が架絽の話に耳をかたむけると、彼は話し始めた。
「いや…最近、凄くスケジュールがハードだから」
「そっかぁ、桃香はモデルさんだもんね」
「しかも、この頃 桃香が出てる雑誌とかCMとか、よく見るよな」
皆が心配そうに桃香を見る。
しかし本人は、さほど気にしていないようだ。
「…確かに仕事は増えたけど…そんなに心配してもらう程じゃないわ。
あ、今日はこれから、練習室で個人練だって」
「そうだった!早く行かねぇと良い所取られるッ!」
ヨーウェが言い、この場はこれで終わったが、アクアは怪訝な顔をしていた。
彼女には、桃香が話をそらしたようにしか 聞こえなかったのだ。
個人練習が始まって時間がたっても、アクアはまだ考え込んでいた。
…その時。
ガッシャーン!とうもの凄い音が、隣の部屋から聞こえてきた。
隣は確か…桃香が練習している部屋。
ヨーウェと架絽は部屋が離れている。こんな音をたてるはずも、気づくはずもない。
嫌な予感と同時に、アクアは走り出した。
ドアを覗いてみると、桃香のハープが横倒しになっていた。
…そしてその隣には。
「え…どうしたの!?」
桃香が倒れていた。…明らかに呼吸が落ち着いていない。
アクアが急いで体を起こすと、桃香はうっすらと意識を取り戻した。
「…アクア…?」
まさかと思い、直感で桃香の額に触れる。
すると、予想通り 彼女の額は熱かった。
「ちょっと桃香、熱あるんじゃん!」
「……っ……」
アクアが何を聞いても、桃香はつらそうにするだけで 答えてくれない。
よほど熱が高いのだろう。
アクアは、焦りよりも驚きの方が大きかった。
モデルをしているせいか、桃香は普段から 体調だけは万全なのだ。
最近は昼夜構わず 仕事や練習をしているという噂も聞くが、本当のこととは思えない。
第一、そんなことをしようとしたら まず架絽が許さないだろう。
…色々な思考が頭の中を巡るが、今のアクアに そんなことを考えている暇はなかった。
「…とにかくっ、早く保健室に!」
そう言って立ち上がったアクアを、桃香が制した。
「大丈夫…すぐ、治まるから…気にしないで…」
半強制的に 桃香を備え付けのベッドに横にしたアクアは反発する。
「何言ってんの…先生呼んでくるから、寝てるんだよ!」
「…呼ばなくていいわ…そこまで重症、じゃない、から…」
口調は断固としているが、桃香はいまだ苦しそうに言った。
…とうとうアクアはあきらめたらしい。
「それにしては かなりきつそうだけど…しょうがないな、分かったよ。
でもちゃんと寝てなよ、見張ってるからね」
桃香は返事の代わりに微笑を浮かべると、疲れからか
そのまま眠りに入っていった。
彼女が再び目をさましたのは、それから30分ほどあとだった。
いち早くアクアが気づいて声をかける。
「あれ、もう起きたの?早いなぁ。
気分はどう?…まだ少し熱あるね」
「おかげさまでだいぶ楽になったみたい。
…今日はゆっくり休むから…ハープは?」
桃香のハープは、彼女と一緒に倒れてしまっていたのだが、
幸いにも無傷で、綺麗に立て直されていた。
眠っている間に、アクアがやってくれたらしい。
それを見て、桃香は言った。
「…ありがと…」
それは、たった4文字の短い言葉。
しかしこの4文字は、それ以上に彼女の想いが詰まった 最高の一言だった。
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